1. 銀河団の高温ガスと宇宙の構造の進化
宇宙の中でも高温でかつ激しい活動領域からは、X線を中心に多量のエネルギー放射が行われています。例えば銀河が集団となっている銀河団では、1000 万度から1億度の高温ガスの中に銀河が浮かんでいます。X線でしか見えない高温ガスの質量は、可視光で見えている構成銀河の質量の3倍ほどもあり、銀河団の本質を知るためにX線観測が欠かせません1。アストロE衛星の高分解能分光器を用いることにより、このガスの元素2 の成分と、物理状態とを、これまでとは桁違いの精度で詳しく調べることができるようになります。そのために、はじめて、銀河団中の激しい高温ガスの流れを解明する3 事ができるようになります。これにより、銀河、銀河団の形成のしくみが明らかになり、宇宙の構造形成がいかに進んできたかを知る手がかりが得られる事が期待されます。
2. ブラックホール流入物質の運動と時空構造
中性子星やブラックホールへ大量の物質が流れ込み、それらの重力エネルギーが解放されてX線で明るく光っていることも良く知られています。アストロE衛星の高分解能分光器やX線CCDカメラでは、落下物質のブラックホール近くでの運動を検出することができ、ブラックホール近傍の時空構造の解明4が期待できます。また、多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在していることが、日本のあすか衛星の観 測でも明らかになってきています。アストロE衛星では更に高い感度で、遠くの銀河まで詳しく調べ、その進化を探ることにしています。
3. 高エネルギー粒子加速
地上には、非常に高いエネルギーの宇宙線がふりそそいでいます。中には、1個の粒子あたり16ジュール5という想像を絶するエネルギーに達するものもあります。宇宙には、こうした宇宙線を作り出す「巨大加速器」が存在し、その中で粒子が加速されて高いエネルギーを持つと考えられています。広い波長にわたって観測を行う事のできるアストロ E 衛星では、高いエネルギーのX線・ガンマ線の観測から、宇宙線の加速がどこで、どのように行われているかを探査し、その起源と加速の機構を探ろうとしています。
(注)
- こうした高温ガスを閉じこめておくために、観測される質量の5倍近くもの質量を、観測には直接かからない「暗黒物質」が担っている事が示唆されています。
- X線の輝線は各元素に特有の波長を持ち、その波長と強度の観測から、元素組成と、温度、電離度等が分かる。
- 高速運動のドップラー効果により、見かけの波長がずれることを検出する。
- 強い重力場の中では一般相対論の効果で、見かけの波長が長くなる。
- 4カロリー。1グラムの水を4度上昇させる事ができる。
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