観測

ガンマ線バーストはいつ起こるか予想がつかないため、 観測データの取得方法には工夫が凝らされている。 ガンマ線バーストの解析には、高い時間分解能とエネルギー分解能が必要で、 かなりの量のデータが発生する。 しかしながら、ガンマ線バーストは頻繁には起きないので、 そのような大量のデータを常時出力するのは無駄であるし、 『ぎんが』のテレメトリには、そのような余裕はない。 そこで、常時出力するのはバックグラウンドの解析や 検出器の状態把握などに必要な少量のデータにとどめておき、 ガンマ線バーストが起きた時だけ詳細なデータが出力できれば効率的である。 ただし、検出器から出力されるデータを常時モニターすることで、 ガンマ線バーストの発生を衛星上で検出することはできるものの、 ガンマ線バーストの発生が分かった時には、 そのバーストの最初のデータは失われてしまっていることになるので、 データ処理に何らかの工夫が必要である。

そこで、ガンマ線バースト検出器では、 ガンマ線のデータをデータ処理装置上のメモリに常時書き出しておき、 バーストが起こった時点でメモリの内容を固定する、 という方法を取っている。 メモリはエンドレステープの様に構成されていて、 検出器から送られてきたデータが際限なく書き込めるようになっている。 検出器のデータをモニターしていて、ガンマ線バーストの発生が検出されたら、 そのメモリへの書き込みを制御して、バーストのデータを上書きして しまわないようにしている。 この方法でガンマ線バーストの詳細データを得ることができるので、 あとでそのデータをゆっくり地上に送信すれば良いことになる。

ガンマ線バースト検出器では、比例計数管とシンチレーション検出器の 各検出器について、2種類のデータをメモリに書き出している。 時系列データ(TH)と、パルスハイトデータ(PH)である。 時系列データは0.031秒の時間分解能を持つのに対し、 パルスハイトデータは0.5秒である。 バーストが起きたと判定された時刻を基準に、 シンチレーション検出器では-16秒から48秒のデータが、 比例計数管では-32秒から96秒のデータが最終的にメモリ上に保持される。 このメモリデータは、衛星が受信局の上空に来た時に、 コマンドでテレメトリに出力される。

このようにして取得された、ガンマー線バーストのデータ例を下に示す。 これは、『ぎんが』が打ち上げられて最初に記録されたガンマ線バースト (1987年3月3日発生)である。

[GBD観測例]