各位
X線天文衛星「すざく」によるX線観測の
第1期公募のご案内(AO-1)
<はじめに>
宇宙航空研究開発機構はX線天文衛星「すざく」を2005年7月10日に無事に打ち上げました。この衛星計画の推進にあたり、天文学会を始めとする関係者の皆様の御協力を頂いたこと、御礼申し上げます。打上げ後、観測機器の立ち上げの中で、これまでで最高の分光分解能を実証した高分解能X線分光器(XRS)において、その冷却用ヘリウムが一気に失われてしまい、残念ながら観測不能に陥りました。日米双方に調査委員会が作られ原因究明が進められているところですので、確定的なことを言える段階ではありませんが、検出器開発チームとしては問題が起こった直接的な原因は特定できていると考えています。残る4台のX線CCDカメラ(XIS)と1台の硬X線検出器(HXD)の立ち上げは、8 月中旬までに順調に行われました。その後、観測装置の較正とその性能を実証するための試験観測を行い、「すざく」が予定通り広帯域にわたって高感度かつ優れたX 線分光性能を持つことが確認できました。このことについてはすでに新聞発表、tennetへのSuzaku News#3, #4もしくは、JAXA/ISASのHome page上で
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/0817.shtml
http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2005/0826.shtml
として掲載してあります。新しい「すざく」の特長は、(1)硬X線領域(10-300keV)において、これまでで最高の感度、(2)軟X線領域(0.3-1 keV)で、これまでのCCDカメラに比べて、高い感度と分解能、に代表されます。9月からはすでに、これらの特長を活かし。科学観測を初めています。この初期観測を2006年3月まで続け、2006年4月から、公募観測を開始する予定です。
「すざく」の打上げ前、2004年に公募した観測提案は、X線分光器(XRS)を中心として審査、採択されました。しかし、
現在の「すざく」では異なる観測戦略が必要であり、前回採用のものをすべてキャンセルせざるをえません。そこであらたに、「すざく」第1回目の公募を行います。今回の公募では2006年(平成18年)4月より1年間を対象とします。上に述べました様に、CCDカメラ(XIS)と硬X線検出器(HXD)を活かした、提案をして頂く様、お願い致します。応募締切、観測期間等を以下に示します。広い分野の研究者の皆様の応募をお待ちしております。
<すざく衛星>
すざく衛星には、10 keVまで高効率で集光結像するX線望遠鏡が搭載され、その焦点面にX線CCDカメラ(XIS)が置かれています。XISは、1 keV以下での超軟X線領域において、特に広がった天体に対する感度と分光性能として、Chandra/XMM-Newtonにない大きな特長を持ちます。硬X線検出器(HXD)は撮像能力はありませんが、数百 keVまでの広い波長域で、これまでにない高い感度を持ちます。XISカメラとHXDを合わせた、広帯域観測はすざく衛星の大きな特長であり、観測提案はこうした特長を活かしたものであることが臨まれます。機器の詳細 (Technical description document:近日公開)や、既に観測された観測天体のリスト、これから科学観測委員会(後述)による初期観測時間で予定されている観測天体リストを、すざく衛星の以下のhome pageに掲載します。
http://www.astro.isas.jaxa.jp/suzaku/
<衛星運用計画>
すざく衛星は日米協力で開発がおこなわれ、これまでの開発、現在の衛星運用にかかわる研究者で構成される科学観測委員会(Science Working Group:SWG)が計画全体を進めてきました。すざく衛星打上後の、観測期間は以下の様に定義します。
1.Phase-0:打上後、衛星の基本機器、姿勢系の立ち上げ、伸展式光学台の伸展、検出器の窓開け、試験観測などで2005年8月末までを指します。
2.Phase-I:観測開始後7ケ月間を指し、すざく SWGで選定した観測計画に従って観測を行います。期間は2005年9月から2006年3月までです。目的は観測装置の性能確認、典型的天体による観測可能性の確認をすることです。
3.Phase-II-1(AO-1):2006年4月から2007年3月までの時期を指し、通常の観測時間のすべてを公募観測にあてます。
今回の公募ではこのPhase-II-1の観測提案を受け付けます。観測時間は、日本、米国、日米共同の3つのカテゴリーに分かれていますが、日本時間は米国以外の全ての国の研究者からの公募観測を含みます。特に、ESA加盟国については日本時間から一定の割合をあらかじめ確保し、公募、審査もESAより行います。
今後、提案募集は1年毎を予定しています。以下に時間配分の割合のテーブルを示します。
観測 Phase | SWG時間 | 日本時間 | 米国時間 | 日米 |
| | (内欧州分) | | |
Phase-0(-2005 Aug.) | 0% | 0 % (0 %) | 0% | 0 % |
Phase-I (2005 Sep-2006 Mar) | 100 % | 0 % (0 %) | 0 % | 0 % |
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AO-1 (2006 Apr.-2007 Mar) | 0 % | 50 % (8 %) | 37.5 % | 12.5 % |
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AO-2 (2007 Apr.-2008 Mar) | | | | |
一般公募観測期のすざく衛星の観測時間は、
(1)Observatory Time(4%):姿勢制御、衛星の保守等
(2)Calibration(3%):定期的な機器較正用観測
(3)Director time(5%):全く予想していない天体での突発現象や、ガンマ線バースト、すざくで観測すべきとプロジェクトマネージャーが判断した現象の観測
を留保した残りの88%の実観測時間を上記の表の様に配分します。今回のAO-1では、(1)日本観測時間50%、(3)米国側観測時間37.5%、(4)日米共同観測時間12.5%、の割合で配分することになっております。日米共同枠は、同じ天体について独立な提案が日米で提案された場合、両提案者が共同観測を希望するなら、この枠に取り込みます(希望するかどうかの質問項目が投稿様式の中にあります)。この時間配分方式は宇宙科学研究本部とNASAとの間の取り決めで決められています。また日本側観測時間の中から8%を、日欧共同観測としてESAからの観測提案に割り当てております。従って、この公募の対象となる時間枠は日本占有時間42%ですので、1日の実観測時間を37キロ秒として4923 キロ秒(=37x360x0.88x0.42)となります。前述のように、日米欧以外の外国の研究者も日本時間の枠に提案して頂くことができます。但し、審査は日本国内の提案と同時に行い、その合計時間はESA枠を越えない範囲とします。
<観測提案の諸条件>
Phae-Iでの観測天体については、すざく SWGで、衛星の性能を確認するために、この衛星の特徴を活かして観測計画が立てられております(すざく Home Pageに掲載)。今回の公募観測では、重複する天体の提案に対しては、特別に新しい要素がなければ、採択しない方針ですので、御注意下さい。
提案する観測時間の長さについては、目的とする科学的成果に必要な統計を考慮して、理由を提案書に明記して下さい。ただし、最短の観測時間は、衛星の運用の効率を考慮し10ksec以上とします。長い方に制限を設けませんが、観測時間に匹敵する科学的成果が要求されることになります。
天体現象の位相や、同時観測計画に合わせて、観測の時期を指定することもできます(time critical observations)。
突発的現象を予想できる場合には、Target of Opportunity Observation(TOO)として提案することができます。但し、対象とする天体名と、TOOを行うための条件を明示することが要求されます(漠然と「超新星が爆発したら」などの提案は受け付けません)。またAO-1の期間に起こる確率、その現象の継続時間も示して頂きます。
全く予想していない天体での突発現象や、ガンマ線バースト、および特に「すざく」で観測すべきとプロジェクトマネージャーが判断した現象が起きた時には、Director time(5%)を用いて観測し、そのデータはすぐに公開します。
<提案採択の手順とスケジュール>
日本枠の公募締め切りは、2006年1月7日正午(日本時間)とし、日本国内のレフェリーによる査読、評価の後、2月の観測運営委員会において日本時間の採択提案を決定します。この時、欧州ESAからの提案も取り込みます。3月に日米調整委員会を開き、共同観測枠の調整を行い、その後、採択提案の公表を行います。
レフェリーはX線天文学関係者だけでなく関連分野の研究者も含み、複数人による紙面審査の後、観測運営委員会で採択を検討します。
観測提案はA、B、Cの3つのカテゴリーに分けて採択し、Aのターゲットは予定期間(2006年4月から1年間)に優先的に観測します。Bのターゲットは予定期間に観測することを目指しますが、次期に持ち越される可能性があります。なお、衛星運用の状況によっては変更の可能性がありますが、目標天体のデータが取得できた時間が、観測予定時間の少なくとも90%(Aターゲット)、70%(Bターゲット)を越えるまでは観測を続ける予定です。Cは観測時間に空きができたら、拾い上げて観測される可能性があります。その割合は観測可能時間をTとすると、A, B, Cそれぞれ、0.5T, 0.4T, 0.5T分の観測時間に相当する提案を採択します(40%多めに採択)。なお、留保してある12%の時間に余裕があれば、Cターゲットの観測を更に進めることにします。
TOO観測, Time Critical観測は、より重要な科学的意義をもつとしてAターゲットとして採択されることを条件とします。
<観測データの占有権>
採用された提案に基づく観測データは、基本処理を済ませたデータを提案者が取得、解析可能になった後、1年間の占有期間が与えられます。提案以外の緊急のTOO観測データ、ガンマ線バーストのプロセスされたデータはただちに公開されます。。
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
満田和久 | (すざくプロジェクトマネージャー) |
国枝秀世 | (すざくプロジェクトサイエンティスト) |
高橋忠幸 | (すざく副プロジェクトマネージャー) |