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(注)本公募はキャンセルになり、改めて公募を行ないました。このページは記録として残してありますが、内容は古いものですのでご注意下さい。
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宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部 | 井上 一 |
国枝 秀世 |
宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究本部(ISAS)では次期X線天文衛星「Astro-E2」を2005年(平成17年)2月に打ち上げるべく、準備を進めております。この衛星の復活につきましては、天文学会を始めとする関係者の皆様の御協力を頂いたこと、御礼申し上げます。我々はAstro-E2衛星をより多くの天文学関係者に活用して頂くため、打ち上げ後約7ヶ月間の衛星の軌道上試験および試験観測の後、公募観測を開始いたします (2005年2月の打ち上げの場合、2005年9月頃からとなります)。 第1回目の観測公募は2005年 (平成17年)9月頃より1年間を対象として実施されます。応募締切、観測期間等は下記の通りです。広い分野の研究者の皆様の応募をお待ちしております。
Astro-E2衛星では、12 keVまで高効率で集光結像するX線望遠鏡が搭載され、その焦点面にはマイクロカロリメータと呼ばれる大変エネルギー分解能の高い(λ/dλ〜1000 at 6 keV)検出器とX線CCDカメラが置かれます。この高分解能分光撮像観測がChandra/XMM-Newtonにない大きな特長です。また、硬X線検出器により、600 keVまでの広い波長域にも高い感度を持ちます。この内、マイクロカロリメータの冷媒の寿命が約2年半と予想され、観測の最初の時期はこれを用いた観測が重視されますので、提案ではその点にご留意下さい。詳細は、Astro-E2ホームページにある「Astro-E2技術資料」を参考にして下さい。Astro-E2衛星は日米協力で開発が進められて来ており、開発、衛星運用にかかわる研究者で構成される科学観測委員会 (Science Working Group; SWG)で計画全体が進められています。
Astro-E2衛星の特長であるカロリメータの冷媒に寿命があるため、冷媒がある時期をPhase-I、その後の時期をPhase-IIと呼びます。更に、打ち上げ後、観測が始まるまでの1ヶ月はPhase-0と呼ばれます。
観測Phase | SWG時間 | 日本時間 (内欧州分) | 米国時間 | 日米 |
Phase-0(0-1 Mo) | 0% | 0% | 0% | 0% |
Phase-Ia(2-7 Mo) | 100 | 0 | 0 | 0 |
Phase-Ib(8-19 Mo) | 25 | 37.5 (6) | 32.5 | 5 |
Phase Ic(20-31 Mo) | 15 | 42.5 (7) | 37.5 | 5 |
Phase Id(32-? Mo) | 0 | 50 (8) | 37.5 | 12.5 |
Phase-II | 0 | 60 (10) | 30 | 10 |
Astro-E2衛星の観測時間は、姿勢制御、衛星の保守、装置の較正等の時間 (Observatory Time) 5%、及び緊急的な観測 (Target of Opportunity: TOO) のための時間として3%を確保した残りの実観測時間を上記の表の様に配分します。今回のAO-1では、(1) Astro-E2 SWGが25%、(2) 日本観測時間37.5%、(3) 米国側観測時間32.5%、(4) 日米共同観測時間5%、の割合で配分することになっております。日米共同枠は、同じ天体について独立な提案が日米で提案された場合、両提案者が共同観測を希望するなら、この枠に取り込みます (希望するかどうかの質問項目が投稿様式の中にあります)。この時間配分方式は宇宙研とNASAとの間の協定により決められています。また日本側観測時間の中から6%を、日欧共同観測としてESAからの観測提案に割り当てております (従って純粋の日本観測時間は31.5%)。すなわち、今回応募の対象となる時間枠は日本占有時間31.5%ですので、1日の実観測時間を37キロ秒として3860キロ秒が純然たる日本の公募観測の時間です。なお、日米欧以外の外国の研究者も日本時間の枠に提案して頂きます。但し、審査は日本国内の提案と同時に行い、その合計時間はESA枠を越えない範囲とします。
観測ターゲットについては、既にAstro-E2 SWGで、衛星の機能を確認すると共に、この衛星の機能を最も良く活かした科学観測を目的に、観測計画が立てられています(Astro-E2ホームページ参照) 。今回の公募観測では、ここに上げられているターゲットは、全く別の観測モードなど特別に新しい要素がなければ提案されても、採択されない可能性が高いと思われますので、御注意下さい。
提案する観測時間の長さについては、目的とするサイエンスに必要な統計を考慮して、十分な理由付けを提案書に明記して下さい。ただ、最短の観測時間は、衛星の運用の効率から考えて10キロ秒以上とします。長い方に制限はありませんが、長い観測はその分だけサイエンスの重要度が要求されることになります。
天体現象の位相や、同時観測計画に合わせて、観測の時期を指定することもできます (time critical observations)。 突発的現象を予想できる場合には、Target of Opportunity (TOO)として提案することができます。但し、対象とする天体名と、TOOを行うための条件を明示することが要求されます (漠然と「超新星が爆発したら」などの提案は受け付けない)。またAO-1 (Phase-Ib)の期間に起こる確率、イベントの継続時間も示して頂きます。
全く予想していない現象が起きた時には、衛星の持ち時間 (3%)を用いて観測します。
ガンマ線バーストに関しては、Phase-Ia、-Ibを通して、SWGの持ち時間を割いて200 ksecまで観測することになっており、公募観測としては受け付けません。
今後のスケジュールは、2004年8月18日に公募を締切り (欧米を除く諸外国の提案も含む)、日本国内のレフェリーによる査読、評価の後、10月初旬の観測運営委員会において日本時間の採択提案を決定します。この時、欧州ESAからの提案も取り込みます。11月に日米調整委員会、12月に採択提案の公表を行います。
レフェリーはX線天文学関係者だけでなく関連分野の研究者も含み、数人の紙面審査の後、観測運営委員会で採択を検討します。
採択提案は3つのカテゴリーに分かれ、Aのターゲットは予定期間(2005年9月から1年間)に優先的に観測します。Bのターゲットは予定期間に観測することを目指しますが、場合によると次期に持ち越される可能性があります。Cは観測時間に空きができたら、拾い上げて観測される可能性があります。その割合は観測可能時間をTとすると、A, B, Cそれぞれ、0.5T, 0.4T, 0.5T分の観測時間に相当するプロポーザルを採択します (40%多めに採択)。
TOO観測、Time Criticalな観測はより重要な科学的意義をもつ観測提案 (Aターゲット) に限られます。
採用された提案に基づく観測データは、基本処理を済ませたデータを提案者が取得可能になった後、1年間の占有期間が与えられます。但し、Phase-IaのデータはPhase-Ibの最後 (打ち上げ後19ヶ月目) にまとめて公開されます。衛星の持ち時間を使ったTOO観測、SWGの時間を使ったガンマ線バーストのデータはAstro-E2チームに1年間占有権があります。なお、衛星運用の状況によっては変更の可能性がありますが、観測はXRSで観測予定時間の少なくとも90%(Aターゲット)、70% (Bターゲット)を越えるまでは観測を続ける予定です。
なお、一般の天文研究者のための講習会 (Astro-E2衛星の紹介、提案書作成の説明) を計画しており、別途ご案内致します。