Research

学院生が行っている最近の研究

X線CCDグループの学生が、日々取り組んでいる研究内容を、ここで紹介します。

少し専門的な内容になっています。

 ASTRO-H SXIの開発

 ASTRO-H は 「すざく」に継ぐ 日本の X線天文衛星で、2014年の打ち上げを目標に多くの研究者、エンジニア、大学院生の手で開発が進められています。 ASTRO-H に搭載される検出器の一つに X線CCDカメラ SXI (Soft X-ray Imager)があります。 SXI は 0.4-12 keV の軟X線をイメージングし、同時に数百 eV の分解能で分光することができます。 X線望遠鏡を使った観測装置として SXI は過去最大の視野 (38分角四方) を達成し、 これまで一度に捉えることができなかった大規模な天体全体の精密・高感度観測を実現します。
 SXI は大阪大学常深研究室を 中心として、多数の研究機関が共同して開発を進めています。 私たち X線CCDグループでは、これまでに CCD の駆動・読み出し回路の初期試作モデルを使ってデータ取得系を構築したほか、動作や性能の評価を行ってきました (藤永修論)。 現在は最終の試作モデル回路やCCD素子が完成し、受け入れ準備を進めています。各種性能評価の結果は搭載品の開発に役立てられます。

実験室の様子 真空槽内の様子
(左)実験室で粛々と作業をする藤永氏 (右)CCDを納めた真空槽内部の様子

 X線CCDの検出効率向上のための取り組みも行っています。 衛星の部品に使われるゴムやエポキシは、宇宙空間に晒されることでアウトガスを発生します。 このアウトガスは -120℃に冷却された CCD 素子の入射面を汚染し、これが原因で 低エネルギーX線の検出効率が低下することが知られています。 そこで、アウトガスを発生させる部品がどのくらい汚染物質を放出するか計測試験を行い、 汚染防止対策を検討してきました(清水修論)。
 他にも ASTRO-H 観測機器用電源系の雑音低減化を目指した研究を行っています。 ASTRO-H では、他の衛星や地上観測機器と同様に多様な電圧の電源装置、およびバイアス電圧源が塔載されます。 これらの電源で使用されるスイッチングレギュレータ類は雑音特性があまり良くないため、十分なノイズ対策が必要です。 そこで、SXI で用いられる予定のスイッチングレギュレータ類が発生させる雑音特性を調べ、この雑音を抑制するフィルタ回路の作成・評価を行ってきました(松田修論)。

作成したフィルタ回路
作成したフィルタ回路

フィルタ通過前後の周波数特性
フィルタ通過前後の周波数特性

 これら以外にも、搭載品の開発に必要な様々な機能試験に参加・サポートしています。

ざく衛星による宇宙線加速天体の観測

 宇宙では宇宙線と呼ばれる陽子や電子などの粒子が飛び交っています。 過去の気球観測などにより、宇宙線は 10 の 15乗 eV 程度まで私たちのいる天の川銀河で加速されていると考えられています。 これまで X線観測により電子が銀河系内で加速されている証拠は見つかっていますが、宇宙線の大部分を占める陽子の加速現場は見つかっていませんでした。
 そこで、今まで知られていなかった宇宙線加速天体がないか、アフリカにある TeV ガンマ線望遠鏡 H.E.S.S. が銀河面探査を行ったところ、新たに 50個もの天体を発見しました。 TeV ガンマ線は陽子からも電子からも放出されますが、実はX線観測によってこの切り分けができます。 そのため「すざく」を始めとした X線衛星が続々と追観測を行い、陽子加速の証拠が少しずつ明らかになってきました。
 X線CCDグループでは、「すざく」やヨーロッパの衛星 XMM-Newton の観測データの解析を行っています。大学院生が観測立案も行っています。 この研究は青山学院大学の馬場彩准教授、宮崎大学の森浩二准教授のほか、H.E.S.S. チームとも共同して行っています。

HESS J1702-420
「すざく」X線CCDカメラが撮影した HESS J1702-420 の画像。
X線と TeV ガンマ線(緑の等高線)とでは強度分布が全く異なる。
(Fujinaga et al. 2010, proceedings of "25th Texas symposium", in press)


ほかにも様々な研究を行っています。随時更新していきます!!