トップ > すざく > 速報 > 2005-12-02 (1)
「すざく」公開データの一つが北の空、カシオペア座にある超新星残骸です。300年ほど前に、ここで星が死を迎えたときの大爆発の残骸だと考えられており、地球からの距離は約1万光年です。右図は「すざく」X線CCDカメラの画像で、直径10光年、4分角に広がった高温ガスの輪郭が見えます。左図はX線CCDカメラと、硬X線検出器が捉えたX線のスペクトルで、右側に行くほどより高温、高エネルギーの物質からの放射を捉えています。すざくは0.3-600 keV(キロ電子ボルト)という広い帯域を高い感度で観測する能力が特徴であり、この天体からも、わずか5時間あまりの観測で、0.4 keVから 50 keV までのX線を鮮明に捉えており、去る8/26に公開した図とともに、「すざく」の特徴を代表する図です(JAXAプレスリリース参照)。
図中、緑の線と文字で示したのは、超新星の爆発によって数千万度にまで暖められたガスからの放射で、鉄や硫黄、シリコンといった元素からの特徴的なX線と、なだらかな放射で表されます。この成分は、緑の線で示す様に途中で折れ曲がるはずなのですが、これまでの観測からより高いエネルギーまで放射が伸びていることが示唆されていました。今回「すざく」は、この高エネルギーX線を今までにない精度で確認しました。青い線で示したこの放射は、この超新星の残骸のなかに、極めて高いエネルギーを持った粒子が沢山存在することを示しています。太陽の表面爆発(フレア)時にも見られる高エネルギー粒子の加速現象が、極めて大きな規模で起きていると考えられています。より多くの天体をこのような高精度で観測することで、超新星からのエネルギー解放の仕組みが明らかになると期待されます。我々の銀河の進化を支配する、宇宙のエネルギーと物質の輪廻の詳細が分かるようになるかもしれません。