宇宙が超軟 X 線 (エネルギー約 100-1000 電子ボルト) で輝いていることは 1970 年代から知られています.この超軟 X 線背景放射は, 大小様々な複雑な構造を持ち(図中央), 遠方の点源放射の重なりである宇宙 X 線背景放射の寄与は,銀緯の高いところでも 30% 程度にすぎません. 残る放射のうち,小規模な構造は過去の超新星爆発の残りかすに起因し,大規模な構造は銀河系円盤,バルジやハロー,さらには銀河間空間の高温ガスの重ね合せだと考えられています.しかし,それらの寄与は本当にあるのか,どの程度寄与しているのか,いまだ超軟 X 線背景放射の起源は謎に満ちています.
広がった超軟 X 線放射の分光を得意とする「すざく」は,銀河系高温ガス中の炭素,酸素,ネオンからの輝線を初めて一度に捉え(図), また,輝線の強度比が方向によって全く違うことをはっきりと示しました.このようにして,「すざく」は銀河系高温ガスの分布,ひいては 30 年間の謎であった超軟 X 線背景放射の起源に迫ります.
図:「すざく」の裏面照射型 CCD で得た高温ガスの X 線スペクトル.横軸はエネルギー (キロ電子ボルト),縦軸はカウント数.青は検出器バックグラウンド.様々な元素からの輝線が存在し,方向による違いが一目瞭然である.中心はローサット全天探査による 3/4キロ電子ボルトにおける画像 (Snowden et al. 1995, ApJ,454, 643).(図作成: 萩原利士成)