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すざく観測速報7: 「すざく」の秘密兵器, 広帯域全天モニタ(WAM)

〜ガンマ線バーストをとらえる〜

本記事は天文月報99巻4号に掲載されました。

ガンマ線バーストは, 1960年代に発見されて以来, その起源は長らく謎に包まれていましたが, 近年の Beppo-SAX, HETE-2 などの衛星の活躍によって, その多くが宇宙遠方の大質量星の末期の重力崩壊に伴って発生する宇宙最大級の大爆発であることが確実視されるに至りました. しかし, その発生メカニズム, 特に「短い」バーストに関してはいまだによく分かっていません.

広帯域全天モニタ(WAM)は昨年8月22日から本格的なガンマ線バーストのプロンプト放射(バースト本体)の広帯域観測(観測範囲:50キロから5メガ電子ボルト)を開始し, 今年の1月末までに51個のガンマ線バーストを観測しました. これは実に年間100個を超えるペースに相当します. バーストの継続時間は1秒未満の「短い」バーストから1000秒程度の長いバーストまで多岐に渡り, その形状もバラエティに富んでいます(図左). 中にはメガ電子ボルトを超える信号を検出したガンマ線バーストも数例あり(図右), WAMの最大の特色となっています. このようにWAMはほぼ全天を常時監視する「すざく」の隠れた秘密兵器なのです. 今後も, 2004年に打ち上げられたアメリカのSwift衛星や ガンマ線バースト惑星間ネットワークとの国際協力によって, ガンマ線バースト研究をより一層進めて行くものと期待しています.


図: (左) HXD-WAMで取得したガンマ線バーストのライトカーブ. (右)Swift衛星と同時検出したガンマ線バーストのエネルギースペクトルの例

文責: 山岡和貴(青山学院), 大野雅功(広大), 寺田幸功(理研), 田代信(埼玉大), 村上敏夫(金沢大)

HXD-WAM の全天モニター機能を用いた観測は, ガンマ線バーストにとどまらず, 軟ガンマ線リピータ(SGR)や太陽フレアに関しても高い感度を持ちます.昨年12月には, 巨大な増光を示したSGR 1806-20からの小フレアを検出しており, また, 8月後半から9月前半に渡る一連の太陽フレア群も検出しています. こうしたHXD-WAMの観測は, 公募観測での募集は行いませんが, 「すざく」衛星のホームページやガンマ線バースト速報ネットワーク(GCN)などを通じて, できるだけ早く全世界に公開するようにしています. 皆様の研究に役立てれば幸いです.


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