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物質によるX線の吸収

エネルギーの低いX線ほど物質に吸収されやすいという性質があります。そのため、天体と観測者である私たちとの間にたくさんの物質があると、エネルギーの低いX線は吸収されてしまいます。図7にその様子を示しました。天体のスペクトルがまっすぐであったとして、天体と私たちの間に物質が少しあると、エネルギーの低いX線は少し吸収されます。物質の量が多いと、エネルギーの低いX線の吸収される量も増え、地球まで届かなくなってしまいます。これに対して、エネルギーの高いX線は、天体と私たちの間にある物質にはあまり影響を受けず、ほとんどそのまま地球に届きます。

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図7:X線のエネルギーと物質による吸収

このように、一口にX線といってもエネルギーによってずいぶん性質が異なります。そこで、エネルギーが低くて物質に吸収されやすいX線を「軟X線」、エネルギーが高くて物質に吸収されにくいX線を「硬X線」と呼んで便宜的に区別することにします。こうすると便利なことが多いのです。硬X線は吸収の影響を受けにくいと書きましたが、言い換えると硬X線を使えば、天体が多少隠されていても透かして見ることができるということになります。宇宙にはガスに覆われて正体を隠している天体がたくさんあるのですが、そういった天体を観測するには、透過力の強い硬X線が有効な手段の一つとなります。

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