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スペクトルとは?

天文学は“観察する”学問です。相手のところまで行って、手に取って触れたりすることはできません。ひたすら観察するだけです。

ただ、一口に観察するといっても、調べることができるものはいくつかあります。まず「空間的な広がり」です。これは写真を撮ればわかります。もちろん、望遠鏡やカメラの性能によって、どこまで細かく見ることができるかは変わってきます。なお、写真を撮ることを「撮像」といいます。二つめは「時間変動」、つまり時間とともに天体の明るさがどのように変化するかです。時間と天体の明るさ(光度)の関係を示したグラフを「光度曲線」とよびます。三つめは「スペクトル」です。スペクトルも「空間的な広がり」や「時間変動」に劣らないくらい重要なのですが、少々わかりにくい概念です。ここではスペクトルがどういうものかを説明します。

図3のように可視光をプリズムに通すと七色に分かれます。波長によってプリズムに入る時、プリズムから出る時の曲がり角(屈折角)が異なるため、進む方向が変わるのです。このように、プリズムを通して波長によって光を分けることを「分光」、分光して得られた虹を「スペクトル」といいます。

[プリズム]
図3:プリズムによる光の分光

虹の色は光の波長に対応していることは既に説明しました。波長を横軸に、それぞれの色の光の強さ(明るさ)を縦軸にとると、図4のようなグラフを書くことができます。このように、波長と光の強さの関係を示したものも「スペクトル」といいます。このようなスペクトルはプリズムで得られた虹のようにカラフルではありませんが、虹でははっきりしない光の強さが数値で与えられるので、より定量的に光の性質を示すことができるのです。なお、波長のかわりに振動数(周波数)やエネルギーを横軸にとることもあります。X線天文学ではエネルギーを横軸にするのが一般的です。

[プリズム]
図4:波長と光の強さの関係を示すスペクトル。この図では左にいくほど波長が短くなっています。

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